ルイヴィトンレイユールネヴァーフル
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null 風間がうしろから写真をのぞき込んだ。 「ねえ、これどこの人……」 「そんなこと教えられませんよ」  下町は苦笑した。 「女は亭主持ち……」 「ええ。男のほうにも妻子があります」 「どういう気かしら、二人とも家庭があるのに」 「恋は思案の帆《ほ》かけ舟」 「あら、健ちゃん、いい文句知ってんのね、まだ若いのに」  婆さんは振り向いて風間を褒《ほ》めた。のぞき込んでいた風間は、急に振り向かれて婆さんと顔をくっつけそうになり、あわてて体を引いた。 「何よ、逃げなくたっていいじゃない。こんなお婆ちゃんじゃ嫌……」 「ゾーッ」  風間はゾーッと言って首をすくめた。本当に背筋がゾクッとしたらしく、真に迫った感じだった。 「でもこれ、本当に証拠になるの……」  婆さんは下町のほうへ顔を戻した。 「なりますよ。表向きはその二人がそんな旅館から同じタクシーに乗って出て来る理由がないんですから」 「へたなことするものね、こいつら。別々な車で出て来ればいいのに。ケチなのかしら」 「少しでも一緒《いつしよ》にいたいんでしょう」